カテゴリ:相続不動産・不動産FPブログ / 投稿日付:2020/08/08 00:00
「相続対策」には「遺産分割対策」「節税対策」「納税対策」と、3つの対策に分けられます。それぞれ不動産との相性をみていきたいと思います。
■遺産分割対策
遺産分割対策とは、「どの遺産」を「誰に」「どう分ける」のかが重要になってきます。複数人相続人がいるのに、
・自宅しか財産がない場合
・収益マンション1棟有るが現金が少ない場合
等々、遺産は公平に分割するのが理想ですが、不動産は分けづらい財産であることは間違いないと思います。相続財産に不動産がある場合は、複数の相続人にキッチリ公平に分けることが困難なので、トラブルになることがあります。
遺言書がない場合は相続人全員の協議が必要となります。協議がまとまらなければ、遺産分割が長期化して財産が塩漬けになることもあり得ます。遺産分割協議の中の些細なことから相続争いのなることが多いように感じます。
現金や預貯金であれば、1円単位まで平等に分けることは難しくありませんが、同じ物が2つとない「不動産」は平等に分けづらいので「不動産」と「遺産分割対策」の相性はあまり良いとは言えません。
■納税対策
相続税は、原則として相続が開始してから10ヶ月以内に「現金」で納めることが必要です。したがって、流動性の高い現金や預貯金を保有しておいたり、生命保険をかけておくなど、前もって納税資金を用意することが大事です。
納税資金がない時はは、相続税の延納を申請することもできますが、延納の利子税は高いので、相続税を支払うためのお金が足りなくなるという可能性もありますし、「物納」という制度もありますが、平成18年度の税制改正により、物納のハードルは格段に上がりました。
なので、現金がない場合は不動産などの資産を売却して納税資金を準備することになりますが、物件にもよりますが、不動産は右から左に簡単に売れるものではありません。売却までに時間がかかったり、希望の金額で売れないことも想定しておくべきです。
特に、流動性の低い不動産などが財産の大部分を占めるようであれば、納税資金対策は非常に重要です。
不動産を売却して譲渡益出る場合、平成27年の改正までは「取得費加算の特例」の効果が大きかったため、相続発生後に不動産を売却することをお勧めすることが多かったのですが、平成27年から優遇される度合いが減ってしまいましたので、事前に処分できる不動産は一部処分してもよいと思います。また、直ぐに売却できる様に測量や境界の確認を生前に行って、納税資金を確保する準備をすることが必要になります。
何れにせよ資金化に時間がかかる「不動産」と「納税対策」の相性も良いとは言えません。
■節税対策
相続の対策として多くの方がイメージするのは相続税を安くする節税対策ではないでしょうか。相続税は簡単に説明すると、相続財産の税務上の評価額から控除額を引いたものに税率をかけて計算します。1億円の現金は税務上、相続税を評価する時にも1億円で評価しますが、不動産は原則「土地は路線価」、「建物は固定資産税評価」を使って評価できます。
相続税を計算する上での「不動産の評価」方法と、「時価」に乖離が生じます。相続税が安くなることが多いので節税対策と相性が良いと言えます。
さらに、不動産を第三者に賃貸すると、自分で使うこともできませんし、売却することが難しくなります。そのため相続税の計算上、評価額が低くなります。
現金を不動産に変えることで節税効果があり、その不動産を賃貸することでさらに価値が低くなります。(※ただし、空き部屋がある場合は賃貸していないとみなされます)
具体的な評価方法の詳細は、また別の機会に書かせて頂こうと思います。